世界中の高級車ファンを、約50年に渡って魅了し続けているポルシェ911シリーズは、ファンのこだわりの強さから、査定や買取でも独特の傾向が見られます。
ここではポルシェ911の中古車の相場と合わせて、そのような独特の査定の傾向などを紹介していきます。
ポルシェ911の中古車市場での価格相場
ポルシェ911の中古車の価格相場は、すべてのモデルを平均すると「656.2万円」となっています。(2014年5月14日のGoo-netのデータより)
ただし、これはもちろん「あくまで平均」です。ポルシェ911のような高級車になると、一概に相場を出すのが難しく、他の車種ならすべて相場が出ているような情報サイトでも出ていません。
また、ポルシェ911の場合、「カレラ、カブリオレ」の2種類のモデルに大別され、さらにその中でも「カレラS、カレラ4」などと細かいモデルに分かれており、モデルによって価格も異なるので、相場を出すのが難しくなっています。
そのため、価格相場を知るためには「カーセンサーnet」などの中古車情報検索サイトで、あなたのポルシェ911の条件に近い情報を入力して、ピンポイントで調べていただくのが一番たしかでしょう。
最も買取価格が安くなるのは、5代目(996型)
ポルシェ911は現在のモデルで7代目です。この中で買取価格が最も安くなるのが5代目(996型)です。
もちろん「安くなる」というのは「新しい割に安い」ということです。3代目や4代目の買取価格よりは一応高いのですが、「あまり変わらない」ということですね。(これが6代目以降になると、急に高くなります)
なぜ5代目の買取価格は安くなるのか、その理由を説明します。
・5代目は、ポルシェ911で一番の不人気モデル
5代目はポルシェ911で一番の不人気モデルと評されています。
その理由は「丸目でないこと」「エンジンが水冷になっていること」です。
「丸目」というのは、「円形のライト」のことです。普通の自動車と違い、まるでロボットの目のようにまん丸の目をしているポルシェの写真を、どこかで見たことがあるでしょう。
あの印象的な丸目はポルシェ911のシンボルとなっていますが、5代目は例外的に目の形が違うのです。ティアドロップ型という「少し斜めになった形」なのですが、これがポルシェ911のファンの間では不人気の理由となっています。
(デザインがいいかどうかではなく、「ポルシェ911らしいかどうか」が大事なんですね)
・5代目から、エンジンが水冷に代わる
自動車のエンジンは、当然ながら冷やす必要があります。その時空気で冷やすものを「空冷」、水で冷やすものを「水冷」といいます。
自動車の歴史は「空冷エンジン→水冷エンジン」と進化したのですが、ポルシェ911はかなり長い期間、空冷を維持していました。
しかし、そんなポルシェ911も時代の流れには勝てず、環境対策なども考えて、水冷エンジンを採用します。それが5代目だったわけです。
もし切り替わったのが「6代目」だったとしたら、5代目は「ポルシェ911最後の空冷エンジン」ということになっていました。それによってプレミア価値がつけば、丸目でない不人気があったとしても、それなりにカバーできたでしょう。
しかし、5代目で変更してしまったせいで、「最後の空冷」の座も一つ前の4代目に取られてしまったわけです。(このため、4代目はファンの間で特に人気のあるモデルとなっています)
・ポルシェ911のモデルごとの平均価格
このエンジンの切り替えによって、5代目の価値がどれだけ落ちたか、モデルごとの平均価格を一覧にするとわかります。
中古車での平均価格は、2008年の時点で、
・4代目(最後の空冷)…約554.万円
・5代目(不人気車種)…約655万円
・6代目(丸目に戻る)…約1145万円
これはモータージャーナリストの籠島康弘氏2008年9月20日のAll Aboutで書かれていた価格を一覧にしたものですが、見ての通り、5代目と6代目には「天と地の差」があります。一方で、4代目と5代目はほとんど差がありません。
(100万円の差は他の車種では大きな差ですが、ポルシェ911ではあまり大きく感じられないのが恐ろしいです)
6代目も5代目と同じく「水冷エンジン」なのですが、「ライトが丸目に戻った」ということで、価値が上がっています。
7代目がリリースされた今でも、「5代目が一番不人気」なのは変わっておらず、5代目を査定にかける方は、それなりに渋い買取価格になることは覚悟した方がいいでしょう。
(もちろん、今5代目を持っている方は中古で手に入れた可能性が高いので、自分が買った時も安ければ、買取に出す時に買取価格が安くても、別に気にならないかも知れませんが…)
ポルシェ専門店での査定について
ポルシェの専門店は全国各地に多数あり、大抵はポルシェ911を中心として商品を扱っています。普通の車種の場合、こうした専門店で査定を依頼しても、近場に住んでいる方でなければ特に査定価格のプラスにはならない、ということが多いです。
(遠方だと、交通費や輸送費がかかるため)
こうした普通の車種に対して、ポルシェ911の場合は専門店で査定をしてもらう意味が非常に大きくなります。特に4代目までの空冷エンジンの場合はなおさらです。
専門店の中には「空冷エンジン専門」として4代目以前のモデルだけを扱うショップなどもあり、空冷モデルを買取に出す場合は、こうしたショップの方が高額で買取してもらえる可能性が高いからです。
もちろん、上に書いたように遠方に住んでいる場合は交通費、輸送費でマイナスとなる可能性もあるので、必ずしも専門店が有利とは限りません。しかし、「普通の車種より専門店が有利な割合が高い」ということは間違いないでしょう。
そのため専門店での見積もりも一度は試してみることをおすすめしますが、同時に一般的な一括査定も受けるべきでしょう。一括査定の手間はほとんどかかりませんし、専門店の見積もりが高いか安いか知るには、比較対象が必要だからです。
あくまで比較対象の情報を集めるためだけでもいいので、普通の一括査定も受けることをおすすめします。
まとめ
基本的に中古車の相場というのは、「モデルチェンジが行われた」「ガソリン代の高騰で低燃費車の人気が高まった」などの物理的、経済的な理由で動くことがほとんどです。
しかし、ポルシェ911の場合は上に書いたように、むしろこれらの要因とは逆の「人間の個人的な趣味」によって動く部分が大きくなっています。
それは、空冷エンジンの実態を知るとよくわかります。
空冷エンジンの車はポルシェ911に限らず、夏場に渋滞に引っかかっただけでもオーバーヒートする可能性があり、これで日本の街中を運転するには、かなりの神経を使う必要があります。
ファンの方でなければ「そんな面倒な車、一体何が楽しいんだ?」と思われるかも知れませんが、ポルシェ911のファンにとっては、これはごく当たり前の喜びなのです。
「車に命を感じている」といえばわかりやすいでしょう。「どんなに暑くても平気な車」より「暑いとバテてしまう車」の方が、動物のようで愛着を感じる、という気持ちは理解できます。
もちろん、それだけだったらただの面倒な車ですが、ポルシェ911の場合は抜群のルックス、走りの気持ちよさ、ブランド価値があるので、それらも含めて、多くのファンが旧型にも高い価値を見出しているということです。
今後もポルシェ911のモデルチェンジは続いていくでしょうが、時代が変われば変わるほど、ファンの間での空冷エンジンの価値は高まっていくことでしょう。
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