レクサス・ISの査定 ~新型がヒットしても、旧型の買取価格が下がらない?~

2013年のモデルチェンジで賛否両論を巻き起こしつつ、スマッシュヒットしたレクサス・ISは、この影響で旧型の査定・買取の価格にも変化が出ています。

中古車の相場の法則に従い「新型がヒットしたら、旧型の査定価格が落ちる」という状況になっているわけですが、ここではその新型レクサス・ISのヒットと、現在の中古車の価格相場などを見てみましょう。

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レクサス・ISの中古車市場での価格相場・目安

中古のレクサス・ISの価格相場をまとめると、下のようになっています。

・2005年モデル…84~390万円
・2013年モデル…399~668万円

(2014年5月19日のカーセンサーnetより)

旧型の最高値よりも、新型の最安値の方が高いという、めったに見られない構図となっています。これはもちろん、新型がまだ1年しか経っていないこともありますが、モデルチェンジまでの期間が8年と、長かったことも影響しているでしょう。

そんな2013年モデルのISがどれだけ売れているのか、それが査定にどう影響しているかを見ていきます。

新型レクサス・ISの受注状況と、査定への影響

新型のISは、最初の1ヶ月でも目標の9倍以上となる7600台を売り上げるなど、スマッシュヒットを記録しました。(レクサス公式サイトのプレスリリースより)

台数だけなら、このISよりもっと売れている車種は当然あります。しかし、ISの価格帯でこの販売台数は相当なものです。

事実、レクサスの当初の販売目標は800台でしたので、これを見ても「予想外の大ヒット」だったことがわかるでしょう。こうなると当然査定にも影響が出ます。

普通の場合は、「新型が売れる→旧型のオーナーが乗り換える→旧型が市場にあふれる→査定価格が下がる」という流れなのですが、今回のISのヒットは、この通りにはなっていないように思われます。

というのは、新型のデザインについて賛否両論があり、前のオーナーがそのまま乗り換える割合が、通常より低いと見られるからです。

つまり、査定への影響も「ヒットした割には小さい」ということになります。どのように賛否両論なのかを見てみましょう。

全米No.lサイトで、否定派が支持派の2倍

全米No.1の自動車情報サイト『autoblog』では、このサイトがISのモデルチェンジについてどう思うかユーザーに尋ねたところ、「否定派が支持派の約2倍」という結果が出ました。

「支持…30%」「否定…57%」というものです。(2013年1月14日の記事)

このアンケートは旧型と比較してのものなので、「否定=旧型の方がいい」というものです。それが「新型の方がいい」の2倍いた、ということです。

これはつまり「旧型→新型の乗り換え」が少ないことを意味します。このアンケートは1526人という、それなりに多い人数で取られたものなので、信頼性は高いでしょう。

「旧型→新型」の乗り換えが少ないということは、買取価格の変化も起きないということです。上に書いたヒットは、「旧型→新型」ではなく「他車種→IS」という乗り換えが多かったわけです。

これによって買取価格が下がるのは他の車種です。ISの買取価格が下がることは一切ありません。

こう考えると「新型がヒットした割に、旧型の買取価格も落ちない」という、ISにとっては理想的な展開と言えるかも知れません。

モデルチェンジによって「新しい層」を取り込むことは、旧型の買取価格を維持する上でも、メリットがあるんですね。

しかし、賛否両論があったということは、当然「デメリット」もあったわけです。そのデメリットはどういうものか、買取にも影響するものなのか、解説します。

新型の賛否両論のデメリット ~買取への影響は?~

賛否両論ということは、現時点でISに乗っているユーザーに、新型を否定する人も多いということです。

こうした方々は、今乗っている旧型は気に入っているので、すぐにそれを買取に出す、ということはないでしょう。

そのため、買取価格にすぐ影響が出ることはありません。ただ、レクサスとしては「固定ファンを一部失った」ということになります。

この「失った数」が多く、「新たに得た数」が少なかったら、残念ながらそのモデルチェンジは失敗でしょう。

しかし、幸運にもISの場合は「新たに得た数」が多くなっています。それは序盤で紹介した、発売後のヒットを見てもわかるでしょう。

こうして見ると、レクサスは新型のISで「少数の固定ファン」を失いながら「多数の新規ファン」を獲得したことになります。

・「新型が売れたのに、旧型の買取価格が下がらない」理想の展開

今回のISのヒットは、「新型が売れたのに、旧型の買取価格が落ちにくい」理想的な展開だといえます。

旧型のオーナーも、その買取価格が維持されることで安心できますし、新型のオーナーは、生まれ変わったISを見て、自ら喜んで買ったわけですから、これももちろんいいことです。

新型がヒットしたことでレクサス、ISのブランド価値も高まる。しかも、「旧型でないと嫌」という人が増えるので、旧型の査定価格も高まる。

…というように「ブランド全体の価値」「旧型の人気」の2つの理由によって今後の査定が有利になるわけです。

他の車種ではほとんど見られない、「旧型を査定にかける人にとって理想的な展開」ということができるでしょう。

新型のレクサス・ISの評価が分かれた理由

新型のレクサス・ISの評価が分かれた理由は、「エクステリア(外観)が大きく変わった」ことにあります。

このモデルチェンジでISの開発陣は「走る愉しさ」を徹底的に追求し、デザインもアグレッシブなものにしました。旧型ISのマイルドな外観を好んでいた方にとっては、このモデルチェンジはマイナスに映ったようです。

しかし、お陰でこれまでISのファンでなかった人、もしくはレクサスのファンでなかった人までファン層に取り込むことが出来たのですから、これは大成功と言えるでしょう。

・デザインだけでなく、性能の高さも評価された

賛否両論の「賛」のユーザーが支持したのは、もちろんデザインだけではありません。デザインの変更だけだったら「ただのイメチェン」に終わっていたでしょう。

新型の走行性能は、F1選手のアレックス・ブルツ選手も高く評価。
「理想のステアリング・フィール」とレクサスの開発陣も自ら評価する完成度でした。(『autoblog』2013年5月17日の記事より)

アレックス・ブルツ選手はトヨタのレギュラードライバーでもあり、トヨタ系列のレクサスの車種を評価するのは、ある意味で「宣伝の一環」かも知れません。

しかし、ブルツ選手はル・マン24時間レースで2度優勝するなど、レーサーとしての地位も非常に高く、走行性能に関して適当な発言をすることはできない立場です。

(いい加減な発言をしたら、ブルツ選手のドライビングの技術まで、業界人やファンから疑問を持たれてしまうでしょう)

そうした立場のある人が認めたわけですから、新型の走行性能は、レクサスが胸を張って語る通り、相当なものなのです。

まとめ

今回のレクサス・ISのモデルチェンジは、上にも書いた通り「理想的な展開」です。

「新型が売れることが、旧型オーナーの不利益になる」というジレンマは、レクサスなどのメーカー側にとっても避けたい事態の一つです。

今回の場合、それが回避できているわけですから、レクサスが狙ったかどうかはともかく、「一番いい状態」と言えます。

このケースは簡単に言うと、「他の車種からファンを引き抜く」という形で成り立っています。そのため、すべての車種が狙って起こすというのは、当然不可能です。

しかし「実際にこういうケースがある」という参考例にはなるでしょう。今回のレクサスはそうした点で「走る愉しさ」だけでないプラスを、自動車業界に与えたと言えるでしょう。

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