根本的なモデルチェンジ計画が進行中のエスティマは、車名の消滅も予想されており、今後の中古車の買取や査定で、特に大きな変化が予測されます。
ここでは、そんなエスティマの現時点での中古相場を紹介しつつ、このモデルチェンジの詳細について書きます。
エスティマの中古車市場での価格相場
2014年5月現在の、エスティマの中古車価格の目安は下のようになっています。
・1990年モデル…1~128万円
・2000年モデル…1~139万円
・2006年モデル…47~369万円
(2014年5月18日のカーセンサーnetより)
見ての通り、モデルチェンジの間隔が非常に長くなっていますが、上述のように次のモデルチェンジでは「エスティマという車名自体が消える」という可能性もあります。
これはもちろん、中古のエスティマの買取や査定にも大きく影響しますが、このモデルチェンジ計画の詳細と、それによる市場への影響を解説します。
モデルチェンジが中古のエスティマの査定・買取に与える影響
「車名の消滅」は、エスティマに限らず、その車種の中古車の買取や査定に大きく影響します。車名が消えることによって「時代遅れの車種」というイメージが強くなってしまうからです。
最近車名が消えた車種では、スバルのレガシィツーリングワゴンがあります。名車と呼ばれ続けたレガシィツーリングワゴンの場合は、車名の消滅を惜しむファンも多数。
「最後のレガシィツーリングワゴン」として、現行モデルは中古でもそれなりに高く買取される可能性があります。
しかし、「最後のエスティマ」を惜しむユーザーはほとんどいません。そのため、エスティマの場合、車名の消滅は、中古車の査定や買取ではマイナスにしかならないわけです。
エスティマの車名は、本当に消えるのか?
エスティマの車名が消えることは、まだ確定していません。
しかし、現時点で入っているモデルチェンジの情報をまとめると「明らかに別の車種」となる可能性が高く、「車名も変わるだろう」と予測するメディアの声も多くなっています。
たとえば人気自動車情報サイトの「カーリサーチ」は、2014年1月12日の記事で「ここまで変わると、次期モデルはエスティマとは呼べない」「後継のモデルには、新車名が与えられる可能性が高い」と記しています。
実際「エスティマ廃車」の予想はユーザーの間でも強く、トヨタが開発している新ミニバンから「エスティマの後継車種はどれか?」と推測する動きも盛んになっています。
モデルチェンジの延長は、査定にどう影響するか?
上記のように話題になっているエスティマのモデルチェンジですが、実はたびたび延長されています。
当初は2012年の予定でしたが、これが2013年に変更となり、さらに「2014年の夏」とされていましたが、これもやはり延期となりました。
(この度重なる延期については、上述のカーリサーチなどのメディアも毎回レポートしていますが、「さらに延期」という言葉がこれほど見られる車種も珍しいでしょう)
・モデルチェンジに対する中古車市場の反応が鈍くなる
これだけ度々「延長」されると、モデルチェンジのニュースを聞いても、中古車市場はもはや反応しなくなります。
普通の車種の場合は、モデルチェンジで買取価格が落ちる前に査定にかけよう、というユーザーが増えるのですが、それがないということですね。
完全に確定して、後継車種の写真や名前などもアップされて初めて、査定にかけるユーザーが増える、といったところでしょう。
ただ、モデル自体がもう古いですし、「廃車」の噂まで流れている現状では、実際のモデルチェンジがいつであろうと「そろそろ査定にかけよう」というユーザーは当然増えます。
そうして市場に流れる中古車の数が増えれば、当然買取価格も落ちるので、この傾向が加速する前に、早めに査定にかけた方がいいでしょう。
現状では年式さえ古くなければ、エスティマの買取価格はまだまだ高いので、買取を急ぐ意味はあります。
モデルチェンジの詳細 ~エスティマはどう変わるのか?~
次のモデルチェンジで大きく変わる点は、「天才タマゴ」の形状を捨てることです。エスティマはたまご型の独自のフォルムをしており、トヨタ自らがこれを「天才タマゴ」と呼んでいました。
(ちなみに、天才タマゴというのは、冷蔵庫の中に入れるたまご型の脱臭機です)
2012年時点の計画では、このたまご型を維持したまま改良する予定で、そのイメージ画像まで公開されていました。しかし、その計画は白紙となり「たまご型を捨てる」計画が発表されて以降、たびたび延期されているわけです。
・たまご型を捨てて、ボックス型のボディに
現状の計画では、たまご型を捨ててボックス型のボディになる予定です。
つまり、同じトヨタのヴォクシーやノアのようになるわけですが、もともと兄弟車であるこの2車種に加えて、新・エスティマも含めた「ミニバン3兄弟」になる可能性が高いと見られています。
・3ナンバーから5ナンバーのミニバンに
今のエスティマは「3ナンバー(大型)ミニバン」ですが、ヴォクシーやノアの兄弟車となると、これが「5ナンバー(普通サイズ)ミニバン」となります。
すでにプラットフォームはヴォクシー・ノアと共用する可能性が濃厚となっており、後継車種は5ナンバーとなるだろう、と予想されています。
後継車種と現行エスティマは競合しない
このように「まったく別の車種」になるので、後継車種と現行のエスティマは「競合はしない」と言えます。つまり「たまご型のボディがいい」という人や「3ナンバーがいい」という人は、今までどおりのエスティマを買うということです。
「競合しない」というと「古いモデルでもこのまま売れる」と聞こえるかも知れませんが、実際は逆です。
新型のエスティマが旧型と競合しないのは、「もう、その分野にお客さんがいない」からです。つまり「たまご型」「3ナンバー」のニーズがなくなっているということです。
・今後のミニバンは5ナンバーしか売れない
評論家の渡辺陽一郎氏は、「現代ビジネス」の記事で、「今後、5ナンバー&ボックスタイプのミニバン以外は売れない」という指摘をしています。(2013年8月18日の「現代ビジネス」)
つまり、「5ナンバー」でもなく「ボックスタイプ」でもない現行のエスティマは、今後は売れないというわけです。(渡辺氏の予測が正しければ)
実際トヨタもそう思っているので、エスティマを「5ナンバー&ボックスタイプ」のヴォクシー、ノアの兄弟車にしようとしています。
というように、後継車種と現行エスティマは競合しないのですが、それは現行の方が「取り残された戦場」にいるからです。
まとめ
エスティマが長くモデルチェンジをしなかったのは、昔は「する必要がなかった」からでした。「しなくても売れる」し、「売れているから、むしろしない方がいい」状態だったのですね。
しかし、時代は変わって今は「売れないため、モデルチェンジが難しい」という理由で、現行モデルの寿命が伸びるという皮肉な状態になっています。
ただのモデルチェンジであれば予定通り2012年にたまご型のものをリリースできたのでしょうが、「別車種への移行」が濃厚になったので、調整のために延期せざるを得ないわけです。
「モデルチェンジをしなくても良かった時代」「したくてもできない時代」という対比は、エスティマの栄枯盛衰を象徴するだけではなく、大型ミニバン全体の栄枯盛衰を、象徴しているのかも知れません。
このように見てみると、一つの車種の中にも日本史や世界史のような「流れ」があって面白いものです。
そして、それだけの「歴史」を作れたエスティマは、たとえ名前が消えても偉大な車種だったのだろうと、あらためて感じます。
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