2012年に大ヒットしたアクアは、今後大量に中古車が供給されるため、査定での買取価格も落ちると予想できます。
現時点ではまだ中古車市場に流れ始めていないため高めの買取価格となっていますが、今後の査定の動向は、先行き不透明です。
ここではそんなアクアの現在の中古車価格の相場、フィットとの燃費競争など、査定に影響を与える要素を解説していきます。
アクアの中古車市場での価格相場
アクアの中古車の価格は、「119~269万円」です。(2014年5月17日時点のカーセンサーnetより)
新車価格は169~229万円なので、単純に最安値同士を比較すると、7割近いリセールバリューを持っていることになります。
アクアの発売時に買った方の場合、今ちょうど2年落ち程度ですが、2年落ちで7割のリセールバリューは、比較的高い部類です。(もっとも高い部類で、3年落ちで7割程度なので)
「アクアだったらもっと高くてもいいんじゃないか?」と思う方もいるかも知れませんが、実はアクアの買取価格は意外と低いのです。
・アクアの買取価格が意外と低い理由
アクアの買取価格が低くなるのは「売れすぎたから」です。つまり、「供給が大量にある」ので、安くなるわけです。
中古車の価格動向を、現場で知り尽くしているガリバー自動車研究所も、2012年2月29日の年間リセールバリューのランキングで、アクアを圏外にしています。
(正確な順位は諸事情によって書けなかったのかも知れませんが、「下位に低迷」とだけ書かれています)
この理由について所長の鈴木詳一氏は「アクア人気は当面続くと思われるが、それがかえってあだとなる結果になった」とコメントしています。
逆にこのランキングで1位になったランドクルーザープラドについては、「販売台数が少ないことが、高額買取につながった」という指摘をされています。
この両者の対比を見ても「大ヒットした車のリセールバリューはむしろ危うい」ということがわかるでしょう。査定での買取価格だけを考えると、「新車はヒットしない方がいい」わけです。
・「低い」と予想された割には、意外といい?
上のようにガリバーから名指しで「買取価格が低い」とされたアクアですが、序盤で紹介したカーセンサーnetでの買取価格を見ると、「意外といい」といえます。
「2年落ちで7割近い」ということは、「3年落ちで55%程度」という可能性が高く、これはガリバーのランキングでもAクラスに入るレベルです。
もちろん、新車リリース時の爆発的ヒットの印象からすると「意外と安い」となるのかも知れませんが、この「一般のイメージ」が間違っていることは上で説明した通りです。
専門家の当初の予想より査定での買取が高めになっているのは、実際にアクアに乗った方々の評判がよかった、ということを意味しているのかも知れません。
フィットとの燃費競争が査定に与える影響
アクアは「燃費世界一のガソリン車」をアピールして話題となりましたが、その後フィットハイブリッドにこの座を奪われました。
しかし、アクアはその直後にマイナーチェンジを敢行。この改良によって燃費をさらに向上させ、3ヶ月で1位の座を奪還しました。
この、熾烈な燃費競争は、当然旧型アクアの査定にも影響します。新型がフィットを超えていても、旧型の査定には関係ないはずなのですが、しっかり関係しているのです。
・ユーザーは「イメージ」で買う
ほとんどのユーザーは、こうした熾烈な燃費競争があることを知りません。自分が新車や中古車を買う時点で、「どっちが燃費ナンバーワンか」ということしか興味がないわけです。
(実際、車好きでもなければ、それ以上調べる余裕も必要もありません)
そのため、たとえば中古のアクアを買いに来た時、それが改良前の「古いアクア」だったとしても別にいいんですね。
業者の方が「アクアは今、燃費世界一の車ですから」といえば、改良前のアクアだったとしても「そうか、世界一なのか」と思って買ってくれるわけです。
(実際、業者の方も嘘はついていません)
新型だろうと旧型だろうと、とにかく「その時点でアクアが世界一」ということが、中古車を売ることにつながるのです。
つまり「アクアの新型が世界一」→「旧型のアクアでも売りやすい」→「旧型でも買取価格が高くなる」ということです。
このように、アクアの新型がフィットとの燃費競争を制してくれることは、旧型のユーザーにとっても、査定で有利になるわけです。
これからアクアを買取に出す予定の旧型のオーナーの方にとっては、この競争のゆくえは非常に気になるところでしょう。(ゆくえと言っても、ずっと続くのですが・・・)
このマイナーチェンジに対する専門家の批評
燃費以外の部分でも、このマイナーチェンジは査定に大きく影響します。ユーザーの「その車種へのイメージ」が影響するのは、燃費だけでなく、すべての部分で共通だからです。
このマイナーチェンジが市場でどう評価されているか、参考となる専門家の評価を見てみましょう。評論家の国沢光宏氏は、2013年11月28日の記事で、厳しい評価をされています。
国沢氏の評価を一言でまとめると、「このマイナーチェンジは、ただ燃費世界一の座を奪い返すためだけにしたもの」ということです。
たとえば後席の窓が「手回し式」であることなど、乗り心地に対する配慮が不足していることを挙げ「売れなくていい、ということなんだと思う」と指摘されています。
「売れなくても、燃費No.1の座さえ奪還できればいい」トヨタが本当にそう考えていたのかはわかりませんが、少なくとも国沢氏の目にはそう映ったようです。
国沢氏はその他の各部の乗り心地についても、フィットハイブリッドが優っていることを指摘し「専門家なら、この両者で迷ったらフィットに軍配を上げる」と断言しています。
立場のあるプロの方が、「専門家なら」と他の評論家の主張にも影響を与えるような言い回しで評価されるくらいなので、相当フィットを有利に感じた、ということでしょう。
・総合評価でフィットに敗れると、査定価格も落ちる
もし国沢氏の評価が妥当だとすると、今後総合評価でアクアはフィットハイブリッドに差をつけられる、ということです。(現時点でも、販売台数だけを見るとやや劣っているのですが)
総合評価で劣るということは、ただでさえ一時期大量に供給されたアクアなので、今後さらに買取価格で不利になる、ということです。
「燃費世界一」という有利な要素があるうちに、早めに査定に出す、という選択もありかも知れません。
まとめ
アクアのキーワードは何と言っても「燃費」ですが、燃費に詳しい方はご存知の通り、実燃費というのは「ドライバーの腕」でいくらでも変わるのです。
アクアとフィットが、微妙な差での「世界一争い」をしていても、実はあまり関係がないのですね。この程度のカタログ燃費の差は、実際の運転の腕でいくらでも変わってしまうのです。
(もっというと腕以上に「寝坊してギリギリで車を飛ばさない」という人生の心がけの方が、よほど重要だったりします)
国沢氏の指摘が当たっているかはわかりませんが、メーカーが掲げる「燃費世界一」などのデータに、私たち消費者がかなり踊らされている、ということは意識すべきでしょう。
一見非常に重要に思える「燃費世界一」は、ユーザーにとっては実は大したことがないのです。
日頃の運転技術、事故を起こさない心がけ、車体価格も含めたトータルで本当にお買い得かどうか(この点、ハイブリッド車は実は得ではないです)…ということを総合的に考える必要があります。
どこか一点に注目するのではなく、あくまで「全体」を見た上で、車を買うなり、査定に出すなりするべきでしょう。
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