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腕時計が100円で買えるカラクリ~高級時計より正確なのになぜ?

2014.04.07

腕時計が100円で買えるカラクリ~高級時計より正確なのになぜ? はコメントを受け付けていません

「ピンキリ」という言葉がありますが、とりわけ腕時計は値段の差が大きく、高い物は数百万も珍しくありません。安いものとなれば、たったの100円で買えてしまいます。

100円の安価な時計は性能が低いかといえばそうではなく、実用性でいえばほとんど遜色ないどころかない、原理的には高級時計よりもずっと正確に時を刻みます。

なぜ高性能な時計を100円で売ることができるのか、疑問に思われたことはありませんか?実は極度に発達した文明のみが生み出せる結晶の一つ、と言えるかもしれません。

そもそも、なぜ時間を知る必要があったのか?

今でこそ、時間は重要であり誰もが把握して当然のものですが、昔からそうだったわけではありません。

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もともとは、日時計のようなごく単純な時計を使っていました。日が暮れるまでどの程度かわかればそれで十分であり、本格的な時計など必要ありませんでした。

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正確な時間に必要性を感じたのは、中世ヨーロッパの修道士たちです。礼拝の時間を把握しなければならず、これは数世紀に渡る時計の進化の原動力ともなりました。

事実、最初期の時計職人はキリスト教の修道士でした。しかし当時の時計は実にいいかげんで、1日に何度も誤差調整が必要でした。結局は日時計頼りだったのです。

天文学の分野で数々の偉業を成し遂げたガリレオ・ガリレイは1583年、振り子の振幅が一定であることに気付きました。以後の時計には振り子の振幅が利用され、時計の精度は飛躍的に上昇していきます。

実は、この頃から時計に関する原理は今もほとんど変わっていません。時計の仕組みについてはもう確立できたと言えます。

航海や鉄道など、移動手段の発展が時計を求めた

船での移動が増えると、海上での経度・緯度を計算するため、より高精度の時計が求められていました。礼拝の時間と違い、航海中の時間のずれは、座礁や遭難に繋がるため、正確さはより重要でした。

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1840年頃には、アメリカで鉄道が開通し始めます。市民が鉄道の時刻を知るため、大量の懐中時計の需要が生まれました。安価で大量生産されたこの時計は「鉄道時計」と呼ばれ、一般の市民も手にすることができましたが、精度は高くありませんでした。

文明の発達に並行し、人類はより時間に追われるようになりました。懐中時計からより小さな腕時計へと需要が移り、人々はさらに小型の時計を発明していきます。

「セイコー」が変えた市場

1969年、日本のセイコー社がクォーツ式時計を発売しました。この日本製の時計は、その誤差が1ヶ月に数秒という恐ろしいほどの正確さであり、当時のどの時計よりも正確でした。

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クォーツ式時計とは、水晶(クォーツ)に電気を流すと高速振動する現象を「振り子」の代わりに使用したものです。

セイコー社は、開発に関わる特許を惜しみなく世界に公開、クォーツ式時計の製造に多数の企業が参入し、さらなる小型化、低価格化が進みました。

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これにより、値段はもとより性能面で大きく秀でたクォーツ式時計が市場を席巻し、従来の機械式時計ブランドは、もはや産業として成立しえない程の打撃を受けました。これは後にクォーツショックと呼ばれます。

現在では、機械式時計は高級な美術品・嗜好品としての位置付けであり、クォーツ式時計との住み分けが完全になされています。

半導体産業の発展

腕時計を100円で売るためには、もう一つ重要な進化を成し遂げる必要があります。デジタル製品はまだまだコストが高かったのです。

現代のIT社会の基礎となる「トランジスタ」が発明されて以来、その小型化が時代に求められていました。その実態は電卓の発展に見ることができます。

「電子計算機」にトランジスタが組み込まれると、机ほどあったものが、プリンターほどのサイズまで小型化しました。しかし持ち運べるようなサイズではありませんし、非常に高額で、個人で所有できるものではなかったのです。

さらなる低価格、小型化を目指した電卓業界はついに、シリコンの板に大量のトランジスタを詰め込み配線を組んだ「集積回路(IC)」を生み出したのです。

ICの登場により、電卓はポケットに入るサイズにまで小型化し、一般の人々にも手が届く価格になりました。企業中心であった電子計算機が、家庭にも求められるようになり、大きな需要が生まれたのです。

この電卓需要により、ICの生産コストはみるみるうちに下がりました。またICは電卓以外にも、さまざまな電気製品に組み込み可能だったため、瞬く間に広まりました。

現在でもこの半導体技術は向上こそしていますが根本は同じであり、文明を支えています。

こうして100円の腕時計が生まれた

時計の原理の発見、クォーツ式時計の実用化、そして半導体技術の熟成が、安価な時計には必要でした。しかしもっとも重要なのは、時刻を世界で共有し、文化的な生活を向上させようと努力した人間の情熱ではないでしょうか?

100円の時計は、いわば文明が生み出したひとつの結晶である、と考えても差し支えないように思います。

文明の結晶である100円のクォーツ式時計と、機械式時計を同列に並べるのはいささか無粋ですが、あえて性能面で比較してみましょう。

クォーツは寒暖差により性質が変化し、これが時差に繋がります。しかし機械式時計の誤差に比べると極めて小さく、一般的にはクォーツ式時計は10倍正確だと言われています。

さらに、クォーツ式の電子時計は毎日ゼンマイを巻く必要がありません。目覚まし機能やカレンダーなどがついているタイプもあるため、使い勝手の面でも上を行きます。

100円の品物なので、耐久性に問題はあるかもしれませんが、結局は買い直せばよいので問題ありません。この通り、どう見ても機械式時計より数段優れた100円時計の側に軍配が上がります。

とはいえ、どちらが欲しいかと言われれば当然機械式時計であり、100人中100人がそう答えるでしょう。携帯電話でも代用できる現在、腕時計とはそういうものになってしまったのです。

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byヒビタカ

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