住民100人の平均資産が500億円の町がある?そのカラクリとは?
住民100人の平均資産が500億円の町がある、と聞けば、誰でも大金持ちの集まる町を想像するのではないでしょうか?
しかし、その町を訪ねて人々に財産額を尋ねてみると、お金持ちは全然見つからない……。そんなことが実際にありえます。たとえば、シアトルに。ビル・ゲイツ家の周辺です。
彼の家の周りでは、平均資産が500億円になるわけ
マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツは、アメリカの経済誌フォーブスによって、1994年から2006年まで13年連続で世界一の億万長者に選ばれました。
2007年以降は2位~3位に後退していますが、それでも所有する資産総額は約5兆円もあります。自宅があるのは、アメリカ北西部の都市シアトル。かつて、イチローが在籍した大リーグ・マリナーズの本拠地です。
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彼の家の周りで100軒の家の資産を合計すると、それぞれの家庭がいくらもっているかにかかわらず、5兆円以上になるはずです。
そのため、100軒の資産平均は、5兆円÷100=500億円 以上となります。ビル・ゲイツ一人のおかげで、このエリアのアベレージは高額となるわけです。
他にも同じような町がいくつもあります
他にも、アメリカの投資家ウォーレン・バフェットのネブラスカ州オマハにある家の周辺や、メキシコの実業家カルロス・スリム・ヘルのメキシコシティにある家の周辺で同じことが言えます。
ウォーレン・バフェットは、2007年にフォーブスによる億万長者ランキングで1位となり、そのときの総資産額は約6兆4千億円でした。
彼の家の周りの100軒の資産のアベレージは、少なくとも640億円以上だったわけです。
カルロス・スリム・ヘルは、2009年にフォーブス誌で1位となり、その総資産は8兆3千億円でしたので、彼の家の周りで平均資産を算出すれば830億円だったということになります。
100軒ではなく1000軒で計算しても、構いません。ビル・ゲイツの家の周りの1000軒の資産のアベレージは、5兆円÷1000=50億円、ウォーレン・バフェットの家の周辺なら64億円、カルロス・スリム・ヘルの周りなら83億円と、やはりかなりの「金持ち村」になります。1万軒に増やしても「数億円」です。
貧乏人ばかりの町でも、たった一人大金持ちがいるだけで、「平均」すれば全体が金持ちのように見えてしまう「数字」が現れるというマジックです。
上記の例のように具体的に計算の内訳を見てしまえば、「平均」というものに意味がないことに気がつきますが、そうでない場合には異常値であることはなかなかわからないものです。
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もしあなたの住まいの近くに、1000億円くらい持っている億万長者が暮らしていれば、あなたの街は計算上は「金持ち村」になっています。ぜひ近くにVIPを見つけて、「俺はスゴイ村に暮らしている」と自慢してみましょう。
日本人がみんな金持ちに見える不思議
総務省の調査によれば、わが国の「2人以上の世帯」の平均貯蓄額は1,658万円です。
「2人以上の世帯」のほとんどは結婚した家庭でしょうから、「既婚家庭は普通、1,658万円の貯金を持っている」と言い換えてもほぼ間違いないでしょう。
しかし、そう聞いてすんなり納得できる人は少ないのではないでしょうか? 実際には、「えっ? みんなそんなにもっているの?」と驚く人が多いでしょう。
サラリーマンなら、会社で自分の周りの既婚者の顔を見回してください。1700万円以上持っている人がそこにも、ここにもいるように思えますか?
どちらかと言えば、住宅ローンに追われて貯金などしている余裕がない人ばかりではないでしょうか?
これもマジックのひとつなのですが、「総務省の調査による既婚世帯の平均貯蓄です」と言われて疑いを抱く人は、めったにいません。
金持ちばかりがいるはずがないのに、金持ちばかりになる不思議
感覚的には、誰もが「1700万円なんて多すぎる」と感じます。ということは、やはりこの値は、どこかおかしいのでしょう。
ここにも、ビル・ゲイツ村や、ウォーレン・バフェット村と同じようなことが起きています。
貯金を1億円持っている人が10人と、1,000万円の人が90人いた場合、全体の平均値は約1,900万円になります。
この場合、100人中90人がアベレージを下回ることになります。
「中間値」の方が、実感に近いと言われます
一般的には「平均」は「真ん中」なのですが、分布にゆがみがある場合には真ん中にはなりません。
とてつもない大金持ちが少数いるだけで、平均はぐんと大きくなります。総務省の貯蓄額調査も、実は、アベレージを下回る世帯が67.2%もいるのです。
こういう場合には、平均にはあまり意味がありません。1番からビリまで順位をつけたときに、真ん中になる人がいくらなのか、の方が、実感に合った値となります。
これを中間値といいますが、総務省では真の意味での中間値を公表していません。公表しているのは、「貯蓄0」の人を除いた値のみです。
その値は1,001万円ですが、かなり多数いると考えられる「貯金0」の人を含めた場合には、おそらく、600万円~800万円程度になるのではないでしょうか。このあたりが、日本の既婚世帯の普通の貯蓄額と言えるでしょう。
金融機関のセールスパーソンは、あえてこうした値を自分に有利に活用します。「普通の家庭の貯蓄額は1700万円もあるのですよ。お宅は、それと比べるとまだまだ少ないので……」と金融商品のセールスに使ったりもします。
アベレージに関する「マジック」は色んなものにあり得ます。「平均」は必ずしも「普通」ではないことに気をつけるべきでしょう。
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