有名作家たちの華麗なる過去~芥川賞作家は元パンク歌手だった?
大ベストセラーを連発する有名作家も、最初から売れっ子だったわけではありません。
小説だけでは食うことができずに、他の仕事をしていたという方も少なくありません。もしかすると、そんな経験からあの名作が生まれたのかもしれません。
宮部みゆきを生み出したのは速記者のアルバイト経験?
「模倣犯」などのミステリ系作家として活躍中の宮部みゆき。彼女は作家として成功する以前、速記者のアルバイトをしていました。
彼女が創作活動をスタートしたのは意外に遅く、23歳の頃でした。高校卒業後、手に職をつけようと速記の専門学校に通い、卒業後は速記者として働いていました。
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さまざまな講演などのテープ起こしをしている内に、彼女は自分自身でも何かを表現した、と考えるようになります。そこから、彼女の創作人生が始まりました。
話を文章として読みやすく構成する能力が求められる速記。その経験によって彼女の優れたストーリー作りが磨かれたのかもしれません。
もし、選んだ「職」が速記ではなく調理や看護であったとしたら、作家・宮部みゆきは誕生していなかったかもしれません。どこに人生の転機が転がっているのかはわからないものです。
元覆面作家・北村薫は高校教師だった
かつては素性を隠した覆面作家としてデビューし、「スキップ」「ターン」「リセット」の3部作などで人気を集めた北村薫。彼女の前職はなんと高校教師でした。
担当教科は作家らしく国語。作品によって巧に使い分けられる言葉選びは、国語教師の経験によって蓄積された語彙力によるものなのかもしれません。
作品の中にもこの前職での経験が生かされています。前述の代表作である「スキップ」で描かれている高校の授業風景。これがとてもリアルで、実際に彼女の教え子だったお笑い芸人・ラーメンズの片桐仁は「まさにこれこそ自分の受けていた授業だ」と語っています。
国語教師から作家への転身。一見するとまったく関連性の無い職業に思えますが、同じ言葉のプロフェッショナルです。どこかに繋がりがあったのかもしれません。
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村田喜代子は鉄工所勤め、主婦を経て作家へ
現代の純文学界を牽引する女流作家の一人である村田喜代子が本格的に執筆活動に入ったのは32歳の頃。遅めのスタートから芥川賞をはじめとするさまざまな文学賞を受賞し、一気に人気作家の仲間入りを果たしました。
そんな彼女の前職はなんと鉄工所の職員でした。現在でも鉄の街として知られる福岡県は北九州市で生まれ育った彼女からしてみればごく当たり前の就職だったのかもしれません。当時は、後に自分が作家になるとは考えてもいなかったことでしょう。
その後、22歳で結婚し、主婦になります。2人の子供にも恵まれ、ごく一般的な人生を送っています。
彼女に転機が訪れたのは1977年のこと。趣味で執筆した作品「水中の声」が第7回九州芸術祭文学賞最優秀作に輝きます。これをきっかけとして本格的な執筆活動をスタートすることになります。その後の活躍はご存じのとおりです。
破天荒な人生を送った人がとても多いことから、作家=普通ではない人、というイメージが持たれがちです。しかし、彼女の生き様を見ているとそれは単なる偏見であることに気付くことができるのではないでしょうか。
現代文学界の革命児・町田康の前職はまさかのパンク歌手!
デビュー作「くっすん大黒」で芥川賞候補に選ばれるや否や、日本の文学界をひっくり返してしまわんばかりの勢いの作品を発表し続けている町田康。その独特の切り口や文体から、ただの人ではないだろう、と想像している方も多いのではないでしょうか?
まさにその通り。作家になる以前の彼の職業はなんとパンク歌手です。80年代のジャパニーズロックに詳しい方であれば「INU」バンド名を聞いたことがあるのではないでしょうか。同バンドのリーダーであり、ボーカリストの町田町蔵こそが、町田康です。
INUのデビュー作にして唯一の公式フルアルバム「メシ喰うな!」は現在でも日本パンクの伝説の作品として語り継がれているほどの傑作です。強烈なセンスの歌詞、そして喉の奥から絞り出すような歌声でシーンに大きな影響を与えました。
文学界の革命児の前職は音楽界の革命児だったのです。
作家として精力的に活動する中、実は現在も音楽に関わる仕事をひっそりとやっています。人気ギタリスト、布袋寅泰とのコラボレーションや、国民的アイドル、スマップへの歌詞提供は、「小説家・町田康」しか知らない人にとっては意外な事実かもしれません。
その他にも映画への出演、ファッションモデルなどさまざまな活動を行っている町田康。彼にはそもそも「職業」という概念がないのかもしれません。
有名作家の意外な前職についてお話してみました。仕事に限らず、その人生をたどってみると、大好きな作品の意外な原点が見えてきます。
あなたもお好きな作家のルーツを探ってみませんか?
Byチリペッパー眞木
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