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推理小説の歴史には3つの源流があった~謎物語・悪人物語・恐怖小説

2014.04.07

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小説の中でも老若男女に高い人気を誇るジャンル「推理小説」。

その推理小説の源流はどこにあるのでしょうか?聖書外典からエドガー・アランポーまで推理小説の歴史を探ってみました。

推理小説の源流は、3つの系統に分かれる

推理小説の源流をたどると、3つの系統に分かれます。

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1.謎物語
→犯罪とは関係なく、単純に謎解きをする物語

2.悪人物語
→悪人の人生を描写する物語(実話、創作含む)

3.恐怖小説
→犯罪や戦争だけでなく、亡霊などフィクションも含む

というものです。

これらの3ジャンルの物語ははるか古来からあり、それが進化して融合したのがいわゆる「推理小説」というわけです。

以下、3ジャンルの歴史をさらに深く掘り下げます。

1.「謎物語」の歴史

謎物語の歴史は古く、なんと聖書までさかのぼります。

聖書の外典には「ベルとドラゴン」「スザンナの物語」という謎物語があり、これらのストーリーの中では、証言の矛盾から相手の罠を見破ったりする一種の「知的ゲーム」が展開されています。

他にも「歴史の父」と呼ばれるヘロドトスが記した書物「歴史」の中にも「ランプシニトス王の挿話」でそうした謎解きが見られますし、長編叙事詩の「アエイネス」にも、やはり謎物語の要素が含まれています。

これらの物語には、現場に残された足跡を見て初歩的な推理をするなどのシーンが見られますが、これは特別なものではなく、日常生活の中でも人間が無意識にやるものです。

たとえば普段から掃除の行き届いている貴族の家の玄関に、土だらけの足跡が続いていたら「誰か土木作業をする人か、旅人でも来たんだわ」などと推測したでしょう。

このような「推理」は誰でも生きるために無意識にやるもので、聖書やヘロドトスの書物などの古い作品にそういった描写が登場するのも、ごく自然なことだったといえます。

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2.「悪人物語」の歴史

これは謎物語と比べると歴史が浅くなります。

もっともよく知られるものは16世紀のスペインで流行した「ピカレスク小説」です。

ピカレスク小説とは、社会の下層で生きている人物を主人公としたもので、必ずしも悪人の物語とは限りません。

しかし、社会の下層で生きていれば当然周囲には犯罪者も多いですし、自身が生きるために犯罪者となるケースもあります。

そのような犯罪に関する描写は、特にピカレスク小説の中でも人気のある部分だったため、これが悪人物語の歴史の代表例となったわけです。

その後、イギリスで1700年代の終盤に発表された「ニューゲート・カレンダー」は、よりリアルな悪人物語として評判になりました。

これは当時のロンドンにあった「ニューゲート監獄」に収容されていた実在の凶悪犯たちの生い立ちや動機、裁判、処刑などについて記録したものです。

いわば犯罪者のドキュメンタリー本の先駆けであり、そのリアルさからイギリスで大きな話題を呼びました。

その後のイギリスでは、悪人のこうした生い立ちを同情的に描く「ニューゲート小説」と呼ばれるジャンルも生まれたくらいです。

悪人の生い立ちを同情的に描くという点では、たとえば「金田一少年の事件簿」なども同じです。

あの漫画ではたいてい被害者が悪人で、その悪人によって過去に家族などを残虐に殺された人物が復讐を遂げる、というスタイルが基本になっています。

このような流れで、リアル、創作の双方から普及していった悪人物語は、誰もが知っている「怪盗ルパン」や、盗賊出身の探偵であるヴィドックの作品「回想録」などでさらに発展を遂げることになります。

特にルパンに関しては「手口は悪人(窃盗)だけど、目的は正義」というスタイルも確立しており、その後のエンターテイメント小説全般に影響を与えたと言えます。

3.「恐怖小説」の歴史

このジャンルに関しては、神話などの中にも恐怖シーンが山ほど登場するので、これらも「恐怖小説」に加えたら、人類の歴史とイコールになるくらい、古い歴史を持つことになります。

そのため、推理小説に直接関わるものに限定すると、イギリスで1700年代後半から流行した「ゴシック小説」がはじまりです。

ゴシック小説というのは、簡単にいうと「古城、墓地、地下牢」などを舞台に、亡霊や妖魔なども登場させる暗黒的なストーリーです。

たとえば日本の「ゴスロリ」は、こういうダークな舞台設定が好まれますが、これもゴスロリの正式な呼び方が「ゴシック・ロリータ」だからです。

ゴシック小説のヒット作を多く出した作家の中に、ラドクリフ夫人がいます。

彼女の作品は怪奇現象に対して科学的な種明かしをする、というスタイルを取っていました。

犯罪に対する謎解きをするわけではありませんが、「説明のつかないものを説明する」という点では、今の推理小説の「トリックの謎解き」に通じるものがあります。

まとめ

推理小説はこのような3つの源流を経て、エドガー・アラン・ポーの「モルグ街の殺人」(1841年)で、現在の探偵小説のスタイルにたどり着きます。

エドガー・アラン・ポーからすでに200年近くたちますが、源流までたどると聖書まで行き着くという推理小説の歴史にはあらてめて驚かされますね。

                        

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