石垣の歴史は意外に深かった~すでに古墳時代に作られていた?
お城のイメージで必ずセットになっているのが「石垣」。お城好きの方は多いですが、石垣の歴史にまで目を向ける方は意外に少ないのではないでしょうか。
ここではその石垣の歴史を古代から近世まで、順を追って紹介してみたいと思います。
古代の日本の石垣
■古墳時代
日本で石垣が本格的に造られるようになったのは、古墳時代です。
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古墳の墳丘(斜面の部分)を石で覆うようになったのがはじまりです。
また、この時代には「石室」も多く造られていますが、その工法も「石を積み上げて、その上に釜石(天井となる石)を載せる」という方法でした。
後の戦国時代などの石垣は「土台としての石垣」ですが、この頃の石室では「壁としての石垣」だったわけですね。
■飛鳥時代
この時期になると書物でもはっきりと記録されています。
『日本書紀』に「宮の東の山に石を累ねて垣となす」という記述が見られます。
この記述がある時期の「宮」というのは斉明天皇の両槻宮のことですが、その遺跡と思われる「酒船石遺跡」から、確かに大規模な石垣の跡が見つかっています。
■奈良時代
奈良時代は「防衛のため」の石垣が本格的に登場した時期です。
663年、日本は白村江(はくすきのえ)の戦いで唐と新羅の連合軍に敗れていますが、彼らが侵攻してくるのに備えて、北九州や瀬戸内海の沿岸部に、広範囲の石垣を築きました。
築いたのは「朝鮮式山城」と呼ばれる古代の山城で、これは基本的に土塁(土の壁)を中心とするものでした。
しかし、その中に部分的に石垣が見られ、この頃から徐々に石垣が防衛用に使われ始めた、ということがわかります。
(ちなみに、この石垣建設では日本と連合していた百済からの亡命者が作業に従事していたことで、朝鮮式の山城の技術が伝わりました)
このような流れの中、どんどん進化していったかと思われる石垣の技術ですが、その後は鎌倉時代に至るまで、特筆すべき進化はありませんでした。
中世の日本の石垣
■鎌倉時代
特に石垣に進化の見られなかった平安時代を飛ばして鎌倉時代の話しになりますが、この時代には誰もが知っている「元寇」がありました。
この際に元の襲来を防ぐため、博多湾の沿岸に「石築地(いしついじ)」を長距離にわたって築きました。
これは石垣による防塁で、「土台としての石垣」ではなく「塀としての石垣」になります。
また、塀としての扱いのため「石垣ではなく石塁である」という指摘もあります。
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いずれにしても、これが「防衛の手段として石垣が使われた」最初の出来事であり、ここから日本の石垣の製造技術はどんどん進化していきます。
■室町時代
室町時代は、特筆すべき出来事や建物はなかったものの、石垣がどんどん普及していった時期です。
敷地の土が崩れるのを防ぐための石垣など「土留め」としての要素も含まれるようになりました。
また、この頃には寺院の基板として「土台としての石垣」も見られるようになります(五重塔などの下にある石垣です)。
この技術が進化して、後の「お城の土台」につながっていきました。
近世の日本の石垣
■戦国&安土桃山時代
そしていよいよ、石垣が大活躍する戦国時代&安土桃山時代に入ります。
現在の石垣の先駆けと言われているのは「観音寺城」の石垣で、1500年代の半ばに登場しています。
(最上部の写真のものです。)
この観音寺城の石垣を築いた集団が「穴太衆」と呼ばれる集団で、彼らはその技術を買われ、織田信長に雇われます。
そして有名な安土城の石垣も彼らが積みあげることになりました。。
意外かも知れませんが、安土城の登場まで、今の私たちが連想するような「お城の石垣」は一般的ではなかったのです。
そう考えると、安土城がいかに偉大な城であったかがあらためてわかりますね。
その後、大阪城、江戸城、姫路城などに次々と石垣が採用されるようになり、城郭建築の必須の技術として定着していきます。
東日本には少ない
東日本には、石垣を持つ城が少ないです。
関東では江戸城、甲府城、小田原城以外ではほとんどありません。
この理由は、石垣の原料である花崗岩が、関東ではほとんど採取できないからです。
花崗岩が日本でよく取れるのは瀬戸内海の沿岸で、この地域には石垣のある城郭が多数残されています。
(姫路城、松山城などが特に有名ですね)
有名なお城
最後に、日本の有名な石垣をまとめて紹介します。
・熊本城
→「武者返し」と呼ばれる独特の傾きを持った石垣になっています。
・松山城
→「打込み接ぎ」という独自の組み合わせ方で石を合わせています。
・丸亀城
→日本一高いと言われる石垣です。
・棚田の石垣
→お城ではないのですが、棚田が崩れないようにする石垣です。三重県松阪市のものなどが有名です。
以上、石垣の歴史を中心に紹介しました。
観光旅行でお城を見る時、あるいは町中で家の石垣を見る時などにこれらの知識を思い出していただけたら幸いです。
*石垣の歴史について、より詳しく知りたい方はWikipediaをご覧ください。↓
Wikipedia「石垣」
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