人間の一夫一婦制は間違いだった!~それならハーレム制がいいの?
日本は一夫一婦制を採用している国であり、婚姻中に他の異性と関係を持てば「浮気」と糾弾されてしまいます。
もちろんそれは当たり前なのですが、他国には一夫多妻制で円満にやっている国もありますし、自然界に目を向ければハーレムを作る生き物はたくさんいます。
そもそもヒトという生物には、どんな結婚形態が向いているのか?実は生物学的な研究によれば、「ヒトは必ずしも一夫一婦制に向いているとはいえない」ことが分かっています。
オスの体を見れば、「もっとも合った繁殖システム」が分かる!
動物がどういう繁殖をおこなうかに関して、目安となるのが「オスの体」です。具体的には体格、精巣(睾丸)の大きさ、男性器の形状、そして精子の数などが挙げられます。
たとえばアザラシやオットセイは、ハーレムを作る生き物として有名です。子孫繁栄するために、オスは戦いでライバルに勝たなければいけないため、体格を大きく進化させてきました。
ですからアザラシやオットセイでは、オスとメスの体の大きさがだいぶ違います。
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また精巣や男性器のサイズも重要です。
ハーレム型をとる動物では、ハーレムを形成した後は精子競争をおこなう必要がないため、体に対して精巣や男性器はあまり大きくないことが一般的です。
つまり「戦いに勝ったオスだけがメスを独占できる」のであり、その後の戦いの必要性はないということになります。
一方、チンパンジーは乱婚型の動物です。発情期を迎えると、オスもメスも自由に交尾しますので、オスは自分の子を産ませるために精子の数を増やす必要があります。
実際チンパンジーの精巣は体と比べて非常に大きく、また男性器も長くできています。これはメスの体から他のオスの精子をかき出し、自分の精子をより多く送り込むためです。
このようにオスの体を見ると、どういう繁殖システムが合っているかがある程度分かるようになっています。
ヒトの体は「精子競争」をおこなうように出来ていた!?
それではヒトの男性を見てみましょう。
まず男女の体格差は、他の動物と比べればそれほど大きくはありません。ですからアザラシやオットセイほどには、「オスの戦い」は必要ないということになります。
次に精巣のサイズですが、ヒトの体全体に占める睾丸の割合は、ちょうど「ゴリラ以上チンパンジー以下」になっています。
つまりヒトはチンパンジーのように誰彼かまわず乱交する動物ではないにせよ、「結婚後に精子競争をまったくおこなう必要がないわけではない」ことが分かります。
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もしも特定のパートナーとのみ、ずっと関係を持ち続ける動物であったなら、ヒトの精巣はもっと小さくなっていたと考えられるのです。
さらに精子の内容を見ても、ヒトは精子競争がおこなえるように出来ていることが分かります。
射精の際、1度に数億個の精子が放出されますが、実はその中に他の男性の精子をやっつけるための「ブロッカー」が多数含まれています。
その数は、卵子に向かって高速で進む「エッグゲッター」という精子よりもずっと多いほどなのです。
つまり、もしメスが婚姻後に他のオスと一切の関係を持たないのだとしたら、ヒトの精子にはブロッカーは必要ないことになります。
それなのに実際は多数存在するということは、そもそもヒトは純粋なる一夫一婦制を確立する動物ではない、と推測できるのです。
ついでに男性器の形状も重要です。ヒトの男性器は通常、微妙な左右差があり、決して棒のようにまっすぐには出来ていません。
これは他のオスの精子を外にかき出すために有効な形状だといえます。
実際、ハーレムを作って安定した男女関係(?)を築いているアザラシやオットセイの生殖器は短く、体に埋もれたような形になっています。それで問題ないからです。
浮気性なのは、男性ではなく女性のほうだった!
このようにして見ると、ヒトは完全な一夫一婦制をとるようには生まれついていないことが分かります。しかも本来、浮気性なのはオスではなくメスということになります。
メスが婚姻後も他のオスと関係を持つ可能性があるからこそ、ヒトのオスは自分の子を産ませるために体を進化させてきたのです。
その事実を裏付けるかのような研究結果に、「実は20人~30人の父親のうち、およそ1人は自分以外の子を育てている」というものがあります。
これはもちろん、再婚による女性の連れ子という意味ではありません。女性側の浮気によって生まれた子を、自分の子として育てている父親が一定数いるということです。
しかもこれは、特に一夫一婦制を採用している先進国のほうに多く見られるということも分かっています。
ドイツの調査機関などは、さらに割合が高く「10人に1人の子は、戸籍上の父親の子ではない」とも発表しています。
そろそろ人生に絶望的になってきた男性もいるかもしれませんが、がっかりしないでください。
ヒトは純然たる一夫一婦制に向いた体ではないにしても、幸い完全な乱婚型をとる動物でもないのです。
ただ「ゴリラ以上チンパンジー以下」の微妙な中間地点にいる複雑な種だといえます。まるで神様が、本能と理性のせめぎ合いに勝つように作った動物のようです。
そう、私たちには「理性」という素晴らしい資質が備えられています。実際、誰もが本能の赴くまま行動してしまっては、社会が成り立ちません。
ちなみに一夫多妻制を採用している国も、私たちが思うような「ハーレム状態」では決してなく、それだけの経済力や甲斐性、責任が男性には求められます。
また、特に先進国の人々は長生きです。ヒトの人生は「繁殖して子育てして、はい終わり」どころか、その後に続く道のりのほうが長いくらいになっています。
男女とも好き勝手に浮気し、パートナーとの信頼を揺らがせてしまうのは、長い目で見れば孤独な人生につながっていくでしょう。
男性も女性もぜひ理性を大切にし、動物的本能に打ち勝って幸せな結婚生活を手に入れたいものです。
By 叶恵美
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