86年に女子の名前から「子」が消えた!~ホントは高貴なものなのに
女の子の名前に、最近あまり見かけることのなくなったのが「子」の文字です。
昔はほとんどの女性の名前につけられていましたが、この30年ほどの間にめったに使われなくなっています。
明治安田生命保険の公表データをもとに推測すると、1985年を最後にほぼ「絶滅」してしまったようです。
もともとは「高貴な名前」ということで大流行したものですが、そうした由来もほとんど忘れさられ使われなくなりました。
上位20位内には、「子」はひとつもありません
明治安田生命のデータによれば、2013年の女子の名前の上位20位以内には「子」のつく名前はひとつもありません。
スポンサーリンク
1位は「結菜」、2位は「葵」、3位は「結衣」で、初めて登場するのは21位の「莉子」。
つづいて88位に「愛子」「菜々子」「桜子」の3つが同順位で「入賞」しますが、それだけです。100位以内に4つしかありません。
ちなみに「莉」はジャスミンの木のことです。「莉子」は「りこ」と読ませることが多いようです。
1986年ころにほぼすたれました
「子」がいつごろから使われなくなったかというと、ベスト10から消えたのは86年(昭和61年)です。
この前年までは毎年必ず、1つ以上はランキングにありましたが、この年以降なくなりました。
ただ、92年に「桃子」が8位に登場、94年、95年にも「桃子」は9位にランクインします。
その後は99年に「菜々子」が6位に、「莉子」が2008年に8位、10年に2位、11年に5位に入っています。
ときどき復活するのは、有名人の名前などと関連があるのではないでしょうか。
大正10年から昭和31年までは、「子」がベスト10を独占!?
1921年(大正10年)から1956年(昭和31年)までは、女子の名前のベスト10には、すべて「子」がついています。35年間にわたり上位を独占していたのです。
たとえば、1921年は1位から順に、文子、千代子、清子、久子、芳子、静子、幸子、美代子、敏子、愛子となっています。
1956年は、恵子、京子、洋子、幸子、和子、久美子、由美子、裕子、順子、典子です。
ちなみに、その間の人気No.1は「和子」です。昭和2年(1927年)から昭和27年(1952年)までの26年間に23回トップになっています。
「和」が好まれたのは、昭和前期にはおそらく「昭和」の「和」、戦争中・戦後には「平和」の「和」と関係があったのでしょう。
1983年から一気に激減します
57年以降は「子」のつく名前はじょじょに減りはじめ、76年にはベスト10のうち4つになります。
その後は82年まで一進一退の増減を繰りかえし83年から激減します。
82年には上位に4つがランクインしていたのに、83年、84年に2つに減り、85年に1つとなり、86年以降にはなくなってしまいました。
スポンサーリンク
80年代の前半に急激に人気を落としたわけですが、その理由はよくわかりません。
ただ、関係がありそうなのは、「子」が減少し始めた時期から一文字の名前がはやり始めたということです。
漢字一文字の名前が85年からブームに!?
トップ10に漢字一文字の名前が初登場するのは73年です。72年までは、一文字だけの名前はトップ10にはありません。
73年に「恵」という名前が初登場して、78年には「愛」が、85年には「彩」と「舞」がランクインします。89年には「瞳」が加わりました。
「子」が絶滅したのと入れ替わりに、漢字一文字の名前がトップ10に3~4つランクインするようになりました。
ちなみに、「彩」「舞」「瞳」はそれ以前は二文字以上の名前としても使われることのなかった漢字です。
85年にランクインするまで、「彩」「舞」「瞳」のつく名前はトップ10には存在しなかったのです。
突如として現れたものの、「彩」は97年、「舞」98年を最後に上位からは消えてしまいました。
「瞳」に至っては、89年、90年の2年間で消えました。意外と短命だったのです。
2000年には、ひらがなの「さくら」が現れますが、2010年を最後に上位から姿を消してしまいました。2007年には「ひなた」が登場しています。
参考記事:今どきの男の子の名前はハ・ユで始まり、ト・タで終わる!
「子」は皇族のお名前。明治時代にそれを庶民がマネするようになりました
女子の名前に「子」がつけられるようになったのは明治時代のことです。皇族の女性たちに使われていたのを、庶民もマネしはじめたのが始まりです。
明治の後半にはブームに火が付き、大正元年(1913年)には「正子」「文子」「千代子」がトップ10にランクイン、翌年には「正子」がトップになります。
1916年には「子」が7つランクインして、5年後の1921年以降は女の子の名前の上位を独占するようになりました。
現在でも皇族の女性のお名前には、愛子、眞子、佳子、彬子、瑶子、承子、典子と、必ずつけられています。
偶然でしょうけれど、お妃様も美智子、雅子、紀子、華子、信子、久子と全員が「子」のお名前です。「子」はとても高貴なものなのです。
もともと「子」は男性を尊敬して使う文字です
「子」が女性の名前に使われるようになったのは奈良時代のこと。皇族の間で使われるようになりました。
それまでは、男子にしか使われなかった漢字です。小野妹子、蘇我馬子など、古代の男性にはときどき見れます。
「子」は男性名詞であり、「王子と王女」「息子と娘」のように今でも男性に使われます。
名前に使われたのは、「子」が尊敬の意を表す漢字だからです。中国古代の偉人には皆つけられていることからわかります。
孔子、孟子、墨子、老子などなどです。「子曰く…」(しいわく)と使われ、先生の意味もありました。
とても気高い漢字である「子」が名前から消えてしまったのは残念です。男の子の名前としてでもよいので、ぜひ復活して欲しいものです。
by 水の
スポンサーリンク