統合失調症の患者に過度の期待をしてはいけない理由
統合失調症の患者さんを抱えるご家族は、様々な問題に遭遇することでしょう。
経済的な問題から、社会的な偏見まで・・・このようなことに対応していくためには、ご家族自体の認識も大変重要となってきます。
家族の過度な期待
あなた自身は現在統合失調症についてどのような考えを抱いているのでしょうか?
まさかわが子が・・・とまだ受け止めきれていない部分もあるのではないでしょうか。
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よくあるケースは、症状は一時的なものにすぎず、きっと回復して従来と同じように「活躍」してくれるだろうという「期待」。
もちろん、回復を願う気持ちは治療に臨んでいくための重要なモチベーションとなります。
しかし、その期待を患者さんにまで伝えるようなことをしてしまいますと、強度のプレッシャーをかけてしまうことにもなりかねません。
まずは病気をしっかりと受け止める
ご家族の中には、育て方が悪かったのではないか、と苦しむ方も多いようです。
これまでの研究によって、家庭での育児方針などは統合失調症の発症となんら関係のないことが明らかとなっています。
これまでの行動に何か問題があったわけではないのです。
過去を思い出して悔やむよりも、患者さんの今を見つめて、そのつらさを受け止めてあげるようにしましょう。
そしてこれからについて、一歩ずつ前進していくために、根気づよく治療にあたっていくことを考えていく必要があります。
様々な問題への葛藤は存在するでしょうが、まずは病気をしっかりと受け止めてあげる気持ちが何より大切となります。
参考記事:統合失調症を認めたくないという心の葛藤と早期治療の必要性
発症前の姿を期待するのは危険
統合失調症にかかってしまった患者さん本人や周囲のご家族は、「病気が発症する前とまったく同じの状態」を目標として掲げてしまいます。
確かに、治療に際して何かしらの目標ビジョンは必要となります。
しかし、統合失調症という病の重さを考えると、やはり完全に元通りを期待するのは危険でもあります。
どうして危険なのでしょうか?従来と同じ生活は、患者さんにとっては大きな負担となることがあります。
もう症状が安定したからといって、復学・復職させた。そうすると、すぐに再発してしまってまた病状が悪化してしまった。
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このようなケースも多数報告されているのです。前の状態に戻そうと思ってしまうのは何の得にもなりません。
なぜ過度な期待が患者のためにならないか
親の過度な期待は、子供にプレッシャーをかけてしまうと言われています。統合失調症の治療でも同じことが言えます。
きっと元に戻ることができる、など軽々しい気持ちを伝えてしまうと、お子さんはその状態に近づけようと努力することでしょう。
しかし、病気のせいで思うようにいかない。どうしてこんなに苦しい思いをするんだ、親が期待をかけたからだ。
このような思考回路になってしまうこともあるのです。
このように考えますと、元通りという期待はやはり高すぎるものと言えるでしょう。
統合失調症に完治という概念はありません。あくまでも症状が抑えられ、元の状態に近づけることができるだけ。
この治療の限界をきちんと理解しておくことが大切です。
口うるさく言い聞かせるのはダメ
統合失調症を発症してしまった場合、家族としての接し方を少し変えていく必要があります。
たとえば、何か口うるさく言い聞かせれば言うことを聞く。このような発想は捨て去らなければなりません。
そもそも育児の方法として好ましくないと言われています。統合失調症の場合には、反感を招いて信頼関係を破壊してしまう原因となってしまうこともあります。
自分はダメだ、と落ち込み再発のきっかけとなってしまう場合もあるでしょう。
マイナス評価ではなく、プラス評価を
完璧主義の方などは特に、減点方式でものごとを見てしまう傾向にあるようです。しかし、これでは患者さんのストレスは増大するばかり。
通常の状態と比べると、できなくなっていることばかりなのですから。
このような評価方法ではなく、ゼロから考えて「何ができたか」「何ができるようになったのか」というプラス面での評価をしてあげるようにしましょう。
毎日一個ずつでもできることが増えていけば、患者さんにとって大きな支えとなります。
おそらくご家族にとっても、そのような考え方の方が闘病生活をスムーズに進めていくことができるのではないでしょうか。
もちろん、何か毎日実績を上げさせるというように「ノルマ」を与えてしまうとかえって逆効果となってしまうこともあります。
できる限り負担をかけないように接してあげる。これが基本理念です。
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