統合失調症患者が職業訓練を受けて社会復帰するための基礎知識
統合失調症を発症してしまった患者が、社会の中で自立して生きていけるようにするためには「はたらく」ということが非常に大切になってきます。
しかし、いきなりこれまでのようにフルタイムで働くことはできないでしょうし、好ましくありません。
少しずつステップを上がっていかなければ、再発のリスク因子となってしまうからです。社会へ復帰するための職業訓練について確認してみましょう。
参考記事:統合失調症患者が社会復帰するための重要なステップとしての労働
職業リハビリテーションとは
これは、その名の通り働くための機能を回復していくための訓練です。その中でも一般的・公的なものが「職業準備支援」です。これは座学・実習による講習・セミナーのようなものだと考えると分かりやすいかもしれません。
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SST(対話によって認知や行動を修正していくプログラム)や、働くための基礎的な考え方指導など行ってくれます。各都道府県に設置されている地域生涯職業センターで無料で受けることができます。
参考記事:統合失調症患者の心理社会的療法SST(社会生活技能訓練)とは?
訓練をするための施設
共同作業所と呼ばれるところが一般的でしょう。単に作業所と呼ばれることもあります。この場所は、職業訓練自体が目的というよりは、社会に復帰していくための一歩を歩みだすための支援を行うことの方に主眼が置かれています。
状態や希望などに応じて、柔軟な作業内容を案内してもらえますので、症状が残っている場合などにも利用することができます。利用する際に費用はかかりませんが、実費は負担しなければなりません。
報酬面では、ほとんど期待できないと考えておいた方がいいでしょう。あくまでも職業リハビリの一種として認識しておくといいかもしれません。
職業リハビリから一歩進んで
統合失調症患者が社会に復帰するためには、順番にステップアップしながら働く訓練をしていかなければなりません。
職業リハビリテーションと呼ばれる本格就労のための準備サポート、これを第一歩目とすると、第二歩目はより本格的な職業訓練となるでしょう。
・精神障害者社会適応訓練事業
この制度は、精神障害者の雇用に前向きな場所で実際に働くというもの。1日8時間以内、1日に1100円の訓練手当が支給されます。
働くことに慣れることができますし、理解もある職場ですので、ファーストステップとしては非常に好ましいものとなるでしょう。
賃金(訓練手当)の方も、一般的なアルバイトより高い水準となっていますので生活費をかせぐには最適かもしれません。ただ、この事業は原則的に6か月まで(3年まで延長することも)となっている点に注意が必要です。
あくまで訓練の一種なのです。
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・授産施設
働く自信がない、そんな方のために生活リズム・技術などを提供するための施設です。徐々に本格的な訓練となっていきます。利用料はかかりませんが、賃金はほとんど得ることができません。訓練施設の一種ということなのでしょう。
・福祉工場
こちらは、事業主と雇用計画を結ぶことを前提としている施設です。職業訓練の中では最も高度な部類に入るかもしれません。賃金は10万円を超えることもありますが、利用するためには月額1万円前後の料金を支払わなければなりません。
・就労支援活動
ハローワークが地域の障害者職業センターと力を合せて行っています。事業者に「補助金」という形でインセンティブを与え、障害者を雇ってもらうという方法です。
職業カウンセラーなどによる相談業務や、職場適応援助者を派遣してアドバイスなどもあわせて行っています。
ただし、現状としては、まだまだ障害者を雇う人は多いとは言えません。今後、中小企業でも一定割合障害者を雇わなければならないようになっていきますので、事態は改善の方向に動くと期待されています。
求人の問題、就労後の問題などを考えますと、統合失調症に対する社会の偏見を改善していかねばならないということがよくわかるかと思います。
さまざまな形態・ステップが存在しているので、積極的に活用していくようにしたいものです。
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