超個人的映画ガイド。私が30年かけてたどり着いた鑑賞法とは?
劇場で最初に観たのは『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年)。
1979年以降、SFを中心にピーク時には年50本近くの新作旧作を観てきました。映画鑑賞暦30年を越える私の超個人的映画ガイドをお届けします。
現在のように複数のシーンをつないでストーリー性を持つ最初の映像作品といわれる『月世界旅行』(Le Voyage dans la Lune、1902年)。それから112年が経ちました。いまでは毎年、日割りにすると毎日約15本の映画が世界中で作られています。
それらすべてを消化するのは無理。どうするか?絞込みましょう。なにを基準に?
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予習厳禁、復習必須。あとで必ずネタバレサイトをチェック
よく私は出合った人に「オススメの映画は何ですか?」と尋ねます。聞くのは題名とジャンルのみ。本人が嬉々として内容を話しだそうとすると制止します。
あらすじ、予想外の展開、どんでん返し、ラストの落ち。これからミステリーを読むのに犯人がだれなのかを聞いてはいけないのと同じです。その人に再会する機会があればお礼とともに感想を話します。
ネタバレサイトは復習に最適です。自分が気付かなかったディティール、仕掛け、伏線などの確認に役立ちます。IMDb(The Internet Movie Database)のチェックも必須。出演者が過去にどんな映画に出ていたかを確認します。
好みの監督、俳優、ムーブメントをまるごと制覇する
その長い歴史のなかで、それ以前と以後を真っ二つに分けてしまうスゴイ作品に出会うことがあります。
『エイリアン』(Alien、1979年)、『ブレードランナー』(Blade Runner、1982年)の初期の2作品でその名を不動のものとしたリドリー・スコット監督。
最近でも、『プロメテウス』(Prometheus、2012年)、『悪の法則』(The Counselor、2013)でその健在ぶりを示しています。
気になる俳優をみつけたとき、出演作品を時系列に鑑賞するのも楽しいものです。チェビー・チェイス(Chevy Chase)やレスリー・ニールセン(Leslie Nielsen)のシリーズ化されたヒット作は必見です。
ある時期、その時代背景を織り込んでムーブメントが起こり、一つのカテゴリが成立することがあります。たとえばアメリカン・ニューシネマ。
『俺たちに明日はない』(Bonnie and Clyde、1967年)から『タクシードライバー』(Taxi Driver、1976年)までのわずか10年の間に作られた作品群は、それまでには扱われることのなかったテーマとストーリーがあります。
チェス、カクテル、銃、ファッションなどの知識が役に立つ
映っているシーンに関する実体験や知識があると面白さは倍増します。野球やサッカーの経験がある人にとって、その試合観戦が退屈なわけがありません。
話の中によくチェスのシーンがあったため、私はチェスを覚えました。映画を観たあとバーに行き、主人公と同じカクテルをオーダーすることさえあります。そんなときはもう完全になりきっちゃってますね。
銃に詳しかったり、ファッションに関心が強い人は、それらにまったく興味がない人には決して見えない何かを発見します。
つぎつぎに新車が破壊されるカーチェイスのシーンは、クルマの損害保険の仕事をしている人だったらリアルタイムで車両の損害査定額を概算しているに違いありません。
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ミリタリーファッション、特にドイツの軍服に多少の関心がある私は、ほんの数秒だけ映ったシーンを見逃しませんでした。
『キリング・ショット』(Catch.44、2011年)で登場人物が着ていたドイツ軍のジャケットが欲しくなって入手した直後の話です。
『ハングリー・ラビット』(Seeking Justice、2011年)で、あるシーンに映り込んだその他大勢の人々の中にそのジャケットを着ている人をみつけました。そんなささいな発見がどんなに嬉しいことか!
徹底的に細部にこだわった映像の重箱の隅をつつく
映っているものすべてを見逃さないようにすると思わぬものに気付くことがあります。室内のテレビ画像やテーブルの上の小物類は要注意。
あとで一時停止で確認されることを前提にして作られているという裏事情を反映しています。熱烈なファンのためにあとあとのお楽しみをフレーム内に仕込んであるわけです。
映画ではないのですが、『The Clock』というビデオ・インスタレーションがあります。掛け時計、置時計、腕時計、時計台の時計。
過去のあらゆる映画から時刻が表示されるシーンだけを24時間分つなぎ合わせて一つの映像作品に仕上げた芸術です。
実時間とシンクロして上映され、「あ、これ観たことある!」となって映画好きにはたまらない不思議なアートでした。
隠された伏線がわかる再鑑賞の妙
よほど気に入った作品でなければ、1度しか観ません。その一方で、あえて2度連続で観たりもします。
各シーンが綿密に構成されて作られた場合、一瞬のカットすら無駄なものがなく、すべての画像が意味を持っています。
ある場面の意味が2回観るとわかったり、見逃していた伏線に気付いたりすることも少なくありません。
ダニエル・クレイグ主演の『ドリームハウス』(Dream House、2011年)がそうでした。
ストーリー冒頭、子供たちがシーツに隠れて、帰宅した父を驚かそうとするシーンは、2回目にその暗喩を理解できました。主観と客観の切り替わりにも注意して再鑑賞してください。
DVDによる鑑賞の場合、特典映像による監督自身の語る撮影裏話もたいへん貴重なものです。
『バニラ・スカイ』(Vanilla Sky、2001年)のキャメロン・クロウ監督による解説付き本編は、通常の本編をみた直後に見るとよいでしょう。出演した2人の女優が12年後、別の映画で再び共演するのも興味深いところです。
突きつけられる厳しい現実に絶望……
映画は決して空想の産物ではありません。確かに上映中の2時間、他のことをすべて忘れて現実逃避できます。逆に、改めて知るこの世の現実について否応なしに考えさせられることもあります。
『ロード・オブ・ウォー』(Lord of War、2005年)は、実在する武器商人への取材をベースにつくられた作品です。
AK-47(1947年式カラシニコフ自動小銃)をめぐる物語は、人類が核兵器を手にしてしまったのと同様の絶望感、無力感を私たちにもたらします。
ある映画を観るとき、その前に観ておくべき過去の作品があります。それ以前に作られた関連する作品や同じジャンルの別作品を観ていることが前提となっています。
シリーズ物は順番に、パロディ作品は元ネタから先に見ていないと話になりません。楽しみ方は人それぞれですが、自分だけの観かたをみつけたとき、世界はさらに広がります。
あなたのオススメの映画は何ですか?
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